副業が赤字になったらどうなる?確定申告・損益通算を会社員向けに解説

副業が赤字になったらどうなる?確定申告・損益通算を会社員向けに解説
「副業を始めたけど、売上より経費のほうが多くなってしまった……」
「副業が赤字なら確定申告はしなくていい?」
「会社員の給与と副業の赤字を相殺できるって本当?」
副業を始めたばかりの時期は、売上がまだ少ない一方で、仕事に必要なものを購入することがあります。
たとえば、
- パソコンや周辺機器を購入した
- ブログのサーバー代を支払った
- 仕事用のソフトを契約した
- 書籍や教材を購入した
- 広告費を使った
といったケースです。
その結果、副業の収入より必要経費のほうが多くなることがあります。
これが、副業で「赤字」と呼ばれる状態です。
ただし、ここで非常に重要なのが、
「副業が赤字になったら、その赤字を会社員の給与から自由に差し引ける」わけではない
ということです。
副業の所得が事業所得なのか、雑所得なのかによって、赤字の税務上の扱いは大きく変わります。
結論
副業の赤字を考えるときは、まず所得区分を確認することが重要です。
事業所得の赤字
→ 一定のルールにより、給与所得など他の所得と損益通算できる場合があります。
雑所得の赤字
→ 給与所得など他の所得から差し引くことはできません。
この記事では、副業が赤字になった会社員向けに、
- そもそも副業の赤字とは何か
- 赤字なら確定申告は必要なのか
- 給与所得と相殺できるのか
- 事業所得と雑所得では何が違うのか
- 損益通算とは何か
- 青色申告なら赤字を繰り越せるのか
を順番に解説します。
「赤字にすれば税金が戻ってくる」といった単純な話ではないので、仕組みから確認していきましょう。

- 副業の「赤字」とは?
- 副業が赤字なら税金はどうなる?
- 副業が赤字なら確定申告は不要?
- 副業の赤字では「事業所得か雑所得か」が重要
- 副業の赤字を給与と相殺する「損益通算」とは?
- 給与所得500万円・事業所得▲50万円ならどうなる?
- 損益通算すると税金が50万円戻ってくる?
- 雑所得で▲50万円でも給与とは損益通算できない
- 雑所得同士ならどうなる?
- 事業所得ならどんな赤字でも損益通算できる?
- 損益通算しても赤字が残ったらどうなる?
- 青色申告なら副業の赤字を3年間繰り越せる?
- 純損失の繰越控除には確定申告が重要
- 副業の赤字を前年へ繰り戻せる場合もある
- 副業が赤字でも帳簿はきちんとつける
- 赤字でも領収書・レシートを保存する
- 赤字を作るために経費を増やすのはNG
- 副業が何年も赤字なら所得区分も確認する
- 副業の赤字についてよくある質問
- まとめ|副業が赤字になったら「所得区分」から確認しよう
- 関連記事
- 副業の赤字・経費を正確に管理したい方へ
- 副業をこれから始める方へ
- 参考文献・出典
副業の「赤字」とは?
まずは、副業でいう「赤字」がどのような状態なのか確認しましょう。
基本的な考え方はシンプルです。
収入 - 必要経費 = 所得
副業による収入よりも、その収入を得るために必要となった経費のほうが多ければ、計算結果がマイナスになります。
副業が赤字になる例
たとえば、副業を始めた1年間で、
収入:30万円
必要経費:50万円
だったとします。
計算すると、
30万円 - 50万円 = ▲20万円
となります。
この例では、収入より必要経費のほうが20万円多いため、所得の計算上は赤字になります。
副業の赤字の基本
収入:30万円
必要経費:50万円
30万円 - 50万円 = ▲20万円
ただし、この▲20万円を会社員の給与から差し引けるかどうかは、所得区分などによって変わります。
使ったお金がすべて必要経費になるわけではない
ここでもう一つ注意したいのが、必要経費です。
副業で50万円を使ったからといって、必ず50万円すべてを必要経費として計算できるわけではありません。
必要経費として考えるためには、基本的にその収入を得るために必要な支出なのかを確認する必要があります。
たとえば、完全にプライベートで購入した商品を、副業が赤字になるように経費へ入れることはできません。
また、自宅の家賃やスマートフォン料金など、仕事とプライベートの両方で使用している費用については、家事按分が関係する場合があります。
副業の必要経費と家事按分については、こちらの記事で詳しく解説しています。
副業が赤字なら税金はどうなる?
副業が赤字になると、
「利益が出ていないなら税金もかからない?」
と考えるかもしれません。
しかし、会社員の場合は本業の給与所得があります。
そのため、副業だけを見て税金を判断するのではなく、給与所得などを含めた所得税の計算全体を見る必要があります。
そして、副業の赤字を他の所得から差し引けるかどうかを考えるときに出てくるのが、「損益通算」です。
損益通算できる赤字は決まっている
損益通算とは、一定の所得で発生した赤字を、他の所得の黒字から差し引いて所得金額を計算する仕組みです。
ただし、すべての所得の赤字が対象になるわけではありません。
国税庁では、損益通算の対象となる所得として、
- 不動産所得
- 事業所得
- 譲渡所得
- 山林所得
の4種類を挙げています。
そのため、副業による所得が事業所得に該当し、その計算上赤字が発生した場合には、一定のルールのもとで給与所得などとの損益通算が問題になります。
一方、雑所得の計算上発生した損失は、給与所得など他の所得から控除できません。

会社員の副業で特に重要
事業所得の赤字
↓
一定のルールで損益通算の対象
雑所得の赤字
↓
給与所得など他の所得とは損益通算できない
副業が赤字なら確定申告は不要?
「副業が赤字なら、確定申告は絶対に必要ない」
と一律に判断することもできません。
会社員の確定申告が必要かどうかは、副業の赤字だけではなく、
- 給与の状況
- 副業の所得区分
- ほかの所得の有無
- 損益通算を行うか
- 赤字の繰越制度を利用するか
- 各種控除や還付申告の有無
などによって変わる可能性があります。
そのため、
「赤字=確定申告不要」
とだけ覚えないようにしましょう。
赤字を給与所得と損益通算したい場合
たとえば、副業が事業所得に該当し、その赤字を給与所得などと損益通算する場合には、確定申告で所得金額などを計算することになります。
国税庁も、事業所得などに赤字がある場合、他の所得の黒字から控除する損益通算について確定申告書の計算方法を案内しています。
また、青色申告者が一定の純損失を翌年以後に繰り越す制度を利用する場合にも、確定申告に関する要件があります。
この繰越控除については後半で詳しく解説します。
雑所得の赤字は給与から差し引けない
一方、副業が業務に係る雑所得に該当する場合は注意が必要です。
雑所得は、基本的に、
総収入金額 - 必要経費 = 雑所得
で計算します。
しかし、その計算で損失が発生しても、その損失を給与所得など他の所得から差し引くことはできません。
国税庁の確定申告の手引きでも、雑所得の計算結果が赤字となる場合、雑所得の合計額の計算では「0円」とする取扱いが示されています。
「副業で20万円赤字=給与から20万円引ける」ではない
副業が雑所得に該当する場合、その赤字を会社員の給与所得から差し引くことはできません。
まず事業所得なのか、雑所得なのかを確認することが重要です。
副業の赤字では「事業所得か雑所得か」が重要
ここまで読んで、
「それなら事業所得として申告すればいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、損益通算をしたいからという理由だけで、自由に事業所得を選べるわけではありません。
副業から生じた所得が事業所得なのか雑所得なのかは、実際の業務の内容や実態などを踏まえて判断する必要があります。
国税庁でも、副業に係る所得として、原稿料やシェアリングエコノミーなどが雑所得に該当する例を示しています。
また、業務に係る雑所得については、営利を目的とした継続的な副業による収入も対象になり得ます。
つまり、
「継続している副業だから必ず事業所得」
とも言い切れません。
事業所得と雑所得の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
副業が赤字になったら最初に確認する3つ
① 収入と必要経費を正しく計算する
② 副業の所得区分を確認する
③ 損益通算できる赤字なのか確認する
「赤字になったから給与から引く」のではなく、この順番で確認しましょう。
次は、損益通算の仕組みをもう少し具体的に見ていきます。
会社員の給与所得がある場合に、事業所得で赤字が出ると所得税の計算がどう変わるのか、数字を使った例で解説します。
副業の赤字を給与と相殺する「損益通算」とは?
副業の赤字について調べると、よく出てくるのが「損益通算」という言葉です。
損益通算とは、簡単にいうと、一定の所得で発生した赤字を、他の所得の黒字から差し引いて所得金額を計算する仕組みです。
会社員の場合は本業から給与所得があるため、
「副業の赤字を給与所得から差し引けるの?」
という疑問につながります。
結論からいうと、副業による赤字なら何でも給与所得と損益通算できるわけではありません。
国税庁では、損益通算の対象となる赤字について、原則として次の4つの所得を挙げています。
- 不動産所得
- 事業所得
- 譲渡所得
- 山林所得
会社員の副業で特に重要なのは、この中の事業所得です。
副業が事業所得に該当し、その事業所得で赤字が発生した場合には、一定のルールに従って給与所得などの黒字と損益通算することになります。

給与所得500万円・事業所得▲50万円ならどうなる?
数字を使って考えてみましょう。
説明を分かりやすくするため、ほかの所得や損益通算上の特別な制限などはないものとします。
会社員の給与所得が、
500万円
だったとします。
さらに、副業が事業所得に該当し、その事業所得が、
▲50万円
だったとします。
このケースで事業所得の赤字50万円を給与所得と損益通算すると、イメージは次のようになります。
損益通算の計算例
給与所得:500万円
事業所得:▲50万円
500万円 - 50万円 = 450万円
この例では、損益通算後の金額は450万円になります。
ここで非常に重要なのが、500万円は「給与収入」ではなく「給与所得」の例だということです。
会社から受け取った年収が500万円だから、そこから直接50万円を引いて450万円にする、という意味ではありません。
給与収入と給与所得は違う
会社員の給与については、一般的に、会社から受け取った給与等の収入金額から給与所得控除を差し引いて給与所得を計算します。
そのため、
給与収入
と
給与所得
は同じ金額とは限りません。
今回の500万円は、損益通算の仕組みを説明するために、すでに計算された給与所得が500万円だった場合として考えています。
年収500万円-副業赤字50万円=450万円、ではない
損益通算では、それぞれの所得金額を計算したうえで通算します。
会社員の場合は、給与収入と給与所得を混同しないようにしましょう。
損益通算すると税金が50万円戻ってくる?
ここも誤解しやすいポイントです。
先ほどの例では、事業所得の赤字50万円を損益通算しました。
しかし、
「50万円の赤字があるから、税金が50万円戻ってくる」
という意味ではありません。
損益通算によって変わるのは、所得税を計算する過程にある所得金額です。
その後、所得控除などを反映して課税される所得金額を計算し、所得税率などを使って税額を計算します。
そのため、実際に所得税がいくら減るのか、還付が発生するのかは、
- 給与所得の金額
- 副業の赤字額
- ほかの所得
- 所得控除
- 税額控除
- 源泉徴収されている所得税
などによって変わります。
「赤字額=戻ってくる税金」ではないと覚えておきましょう。
還付になる場合もある
会社員の場合、給与から所得税が源泉徴収されていることがあります。
確定申告で事業所得の赤字を適切に損益通算した結果、最終的に計算される所得税額がすでに源泉徴収された税額より少なくなれば、所得税が還付される場合があります。
ただし、還付額は個人の状況によって異なります。
「副業で赤字を出せば必ず税金が戻る」と考えるのは避けましょう。
雑所得で▲50万円でも給与とは損益通算できない
では、同じ50万円の赤字でも、副業が雑所得だった場合はどうでしょうか。
たとえば、
給与所得:500万円
副業の雑所得の計算:▲50万円
だったとします。
この場合、
500万円 - 50万円 = 450万円
とはできません。
国税庁は、雑所得の金額の計算上生じた損失について、他の所得の金額から控除することはできないとしています。

| 副業の所得区分 | ▲50万円の赤字 | 給与所得との損益通算 |
|---|---|---|
| 事業所得 | ▲50万円 | 一定のルールで対象 |
| 雑所得 | ▲50万円 | できない |
つまり、赤字の金額が同じでも、所得区分によって税務上の扱いが違います。
赤字額より先に所得区分を確認
事業所得 ▲50万円
→ 一定のルールで損益通算の対象
雑所得 ▲50万円
→ 給与所得など他の所得とは損益通算できない
「いくら赤字か」だけでは判断できません。
雑所得同士ならどうなる?
ここで、もう一つ注意したいポイントがあります。
雑所得には、
- 公的年金等の雑所得
- 業務に係る雑所得
- その他の雑所得
などがあります。
国税庁の確定申告の手引きでは、雑所得の各区分の所得金額を計算したうえで、雑所得の合計額を求める取扱いが示されています。
そのため、業務に係る雑所得の計算でマイナスが生じた場合でも、「給与所得との損益通算」と「雑所得内部の計算」は分けて考える必要があります。
ただし、雑所得の具体的な計算は、収入の種類や課税方法によって扱いが異なる場合があります。
この記事では、会社員の副業初心者が特に間違えやすい、
「副業の雑所得の赤字を給与所得から差し引くことはできない」
という点をまず押さえておきましょう。
事業所得ならどんな赤字でも損益通算できる?
ここまで読むと、
「事業所得なら赤字を全部給与から引ける」
と思うかもしれません。
しかし、ここも単純化はできません。
損益通算には、所得の種類や損失の内容などによって対象にならない部分や特別な取扱いがあります。
また、そもそも副業が事業所得に該当するかどうかも、実態を踏まえて判断する必要があります。
そのため、
「事業所得として申告すれば赤字を給与から引ける」
という目的から所得区分を決めるのは避けましょう。
副業が事業所得か雑所得か分からない場合は、こちらの記事も確認してください。
損益通算しても赤字が残ったらどうなる?
事業所得などの赤字が大きい場合、他の所得と損益通算しても赤字をすべて差し引ききれないことがあります。
国税庁では、事業所得・不動産所得・譲渡所得・山林所得の損失のうち、損益通算をしてもなお控除しきれない金額を「純損失の金額」としています。
たとえば、仕組みを理解するために、
給与所得:300万円
事業所得:▲400万円
という単純なケースを考えます。
300万円の給与所得と400万円の事業所得の赤字を通算しても、単純計算では100万円分の赤字が残ることになります。
このような、損益通算をしても控除しきれない損失については、次に純損失の繰越控除などを確認することになります。
特に青色申告では、一定の要件を満たす純損失について、翌年以後に繰り越す制度があります。
赤字の確認は3段階で考える
① 副業の所得区分を確認する
↓
② 損益通算できる赤字か確認する
↓
③ 通算しても赤字が残るなら、純損失の取扱いを確認する
次は、青色申告で赤字が残った場合の「純損失の繰越控除」を解説します。
「赤字を3年間繰り越せる」とは具体的にどういう意味なのか、翌年に黒字になった場合の計算例も使って確認していきます。
青色申告なら副業の赤字を3年間繰り越せる?
事業所得などで大きな赤字が発生すると、給与所得などと損益通算しても赤字をすべて控除しきれないことがあります。
このとき確認したいのが、「純損失の繰越控除」です。
青色申告者については、事業所得などで発生した損失を損益通算してもなお控除しきれず、純損失の金額が残った場合、一定の要件のもとで翌年以後3年間にわたって繰り越すことができます。
つまり、赤字が発生した年だけで控除しきれなくても、一定の要件を満たせば、翌年以後の所得から差し引ける可能性があります。

「3年間繰り越せる」とはどういう意味?
数字を使って考えてみましょう。
説明を分かりやすくするため、純損失として翌年へ繰り越せる金額が100万円残ったとします。
そして翌年、事業で80万円の所得が発生したとします。
一定の要件を満たして純損失の繰越控除を適用できる場合、イメージは、
翌年の所得80万円 - 繰越した純損失80万円 = 0円
となります。
前年から繰り越した純損失100万円のうち80万円を控除したため、単純化した例では残り20万円があります。
この残額についても、繰越期間内で要件を満たしていれば、その後の年の所得から控除することを検討できます。
純損失100万円を繰り越した例
前年からの純損失:100万円
翌年の所得:80万円
80万円 - 80万円 = 0円
純損失の残り:20万円
一定の要件を満たせば、繰越期間内の翌年以後の所得から順次控除していきます。
なお、この100万円・80万円・20万円は制度上決められた金額ではなく、仕組みを理解するための計算例です。
3年間は「赤字になった年を含めて3年」ではない
期間についても注意しましょう。
国税庁では、純損失の金額について「翌年以後3年間」にわたって繰り越すと案内しています。
たとえば、ある年に純損失が発生して繰越要件を満たした場合、その翌年から3年間が基本的な繰越期間です。
「赤字になった年を1年目として3年間」と混同しないようにしましょう。
一定の災害による損失には5年間の特例もある
純損失の繰越期間は原則として翌年以後3年間ですが、例外もあります。
国税庁では、令和5年4月1日以後に発生した特定非常災害などによる一定の損失について、繰越期間が5年間になる場合があると案内しています。
通常の副業の赤字とは異なる特例なので、この記事では、
通常は3年間、一定の災害損失には5年間となる場合がある
と覚えておきましょう。
純損失の繰越控除には確定申告が重要
ここで注意したいのが、
「青色申告で赤字になれば、自動的に3年間繰り越される」
と考えないことです。
純損失の繰越控除を受けるには、確定申告に関する要件を満たす必要があります。
そのため、
「今年は赤字だから税金がないし、申告しなくてもいい」
と自己判断してしまうと、利用したい制度に影響する可能性があります。
赤字が発生した年ほど、自分が利用できる制度と申告要件を確認することが大切です。
「赤字=確定申告しなくていい」ではない
青色申告で純損失を翌年以後へ繰り越したい場合は、確定申告に関する要件があります。
赤字だから申告不要と決めつけず、利用したい制度から逆算して確認しましょう。
青色申告と白色申告の違いについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
副業の赤字を前年へ繰り戻せる場合もある
青色申告には、赤字を未来の年へ繰り越す方法だけでなく、前年へ繰り戻す制度もあります。
国税庁では、前年も青色申告をしている場合、一定の要件のもとで、純損失を前年分の所得金額に繰り戻して控除し、前年分の所得税の還付を受ける制度を案内しています。
これを「純損失の繰戻し」といいます。

繰越しと繰戻しは方向が違う
簡単に整理すると、
| 制度 | 赤字を使う方向 | 基本的な考え方 |
|---|---|---|
| 純損失の繰越し | 翌年以後 | 一定の純損失を翌年以後3年間の所得から控除 |
| 純損失の繰戻し | 前年 | 一定の純損失を前年へ繰り戻し、前年分の所得税の還付を受ける |
たとえば、前年は黒字で所得税を納め、翌年に事業で大きな純損失が発生したケースでは、要件を満たせば繰戻しを検討できる場合があります。
ただし、前年も青色申告をしていることなどの要件があります。
また、繰戻しによる還付を受ける場合には、所定の手続きが必要です。
「赤字なら前年の税金が必ず戻ってくる」という制度ではありません。
繰戻し=自動で還付ではない
前年も青色申告をしていることなど、制度を利用するための要件があります。
実際に利用するときは、国税庁の最新情報や申告書類を確認しましょう。
副業が赤字でも帳簿はきちんとつける
副業が赤字だと、
「利益がないなら帳簿は適当でもいい?」
と思うかもしれません。
しかし、赤字だからこそ、なぜ赤字になったのかを数字で確認できる状態にしておくことが重要です。
たとえば、
- 年間の売上はいくらだったか
- 何にいくら使ったか
- どの支出を必要経費にしたか
- 減価償却が必要な資産はないか
- 家事按分した費用はないか
などを整理します。
「だいたい100万円くらい赤字だった」という感覚ではなく、帳簿をもとに所得金額を計算することが大切です。
帳簿の基本はこちらの記事で解説しています。
赤字でも領収書・レシートを保存する
帳簿とあわせて重要なのが、領収書やレシートなどの保存です。
赤字になったからといって、
「税金が発生しないから領収書は捨てていい」
とは考えないようにしましょう。
必要経費として計算した支出については、
- 領収書
- レシート
- 請求書
- 購入明細
- 電子取引データ
など、取引内容を確認できる資料を適切に保存します。
特に純損失を翌年以後へ繰り越す場合は、過去の赤字が翌年以後の税額計算にも関係してきます。
帳簿や書類の保存期間についても確認しておきましょう。
領収書・レシートの保存についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
赤字を作るために経費を増やすのはNG
損益通算や純損失の繰越しを知ると、
「経費を増やして副業を赤字にすれば、税金を減らせるのでは?」
と考える人もいるかもしれません。
しかし、税金を減らすためだけに、プライベートの支出や副業と関係のない支出を必要経費にすることはできません。
必要経費を考えるときに重要なのは、実際にその収入を得るために必要な支出なのかという点です。
また、仕事と私生活の両方で使用する費用については、業務に必要な部分を合理的に区分する家事按分が関係することがあります。
赤字は「作るもの」ではなく計算結果
売上と正しい必要経費を帳簿へ記録する
↓
所得を正しく計算する
↓
その結果として赤字になる
「税金を減らしたいから経費を増やす」という順番ではありません。
必要のないものを買えばお金は減る
もう一つ覚えておきたいのが、経費にできることと、お金が得になることは別だという点です。
たとえば、副業に必要だからという理由で10万円を支出した場合、その10万円が一定の要件のもとで必要経費になったとしても、実際に10万円を支払っていることに変わりはありません。
必要のないものまで購入して赤字を増やすことは、副業の資金を減らす原因になります。
税金だけではなく、副業そのものの利益とキャッシュも考えて支出を判断しましょう。
副業が何年も赤字なら所得区分も確認する
副業が一時的に赤字になること自体と、その活動が税務上どの所得区分に該当するかは、分けて考える必要があります。
特に会社員の副業では、
「給与と損益通算したいから事業所得として申告する」
という考え方は避けましょう。
事業所得か業務に係る雑所得かは、帳簿書類の保存状況だけで機械的に決まるわけではなく、活動の実態などを踏まえて判断する必要があります。
赤字が続いている場合も、赤字という事実だけで事業所得・雑所得が決まるわけではありません。
自分の副業の所得区分に迷う場合は、国税庁の最新情報を確認し、必要に応じて税務署や税理士などへ相談しましょう。
事業所得と雑所得の違いはこちらの記事で詳しく解説しています。
最後は、「赤字なら20万円ルールはどうなる?」「住民税は?」「開業初年度でも繰越できる?」「白色申告の赤字は繰り越せる?」など、会社員が迷いやすい疑問をFAQで整理します。
そのうえで、副業が赤字になったときの確認手順をまとめます。
副業の赤字についてよくある質問
最後に、会社員が副業で赤字になったときに迷いやすい疑問をQ&A形式で整理します。
Q. 副業が赤字なら確定申告はしなくていい?
「副業が赤字=必ず確定申告不要」と一律には判断できません。
確定申告が必要かどうかは、
- 副業の所得区分
- 給与の状況
- ほかの所得の有無
- 損益通算を行うか
- 純損失の繰越控除を利用するか
- 還付申告を行うか
などによって変わります。
特に、事業所得の赤字を給与所得などと損益通算したい場合や、青色申告で純損失の繰越控除を利用したい場合には、確定申告に関する要件を確認する必要があります。
「利益が出ていないから申告とは無関係」と決めつけず、自分の状況を確認しましょう。
Q. 副業が赤字なら「20万円ルール」はどうなる?
会社員の副業でよく聞く「20万円」という基準は、副業の売上が20万円かどうかだけで判断するルールではありません。
一定の給与所得者について、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える場合などに、所得税の確定申告が必要となる基準です。
さらに、事業所得の赤字を損益通算する場合や純損失の繰越控除などを利用する場合には、単純に「20万円以下だから申告しない」と判断するのは適切ではありません。
副業の確定申告についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
Q. 副業が赤字なら住民税の申告も不要?
所得税の確定申告が不要だからといって、住民税の申告も必ず不要になるとは限りません。
住民税の申告については、住んでいる市区町村や所得の状況などによって確認が必要です。
また、所得税の確定申告書を提出した場合は、その情報が地方公共団体へ送られるため、通常は改めて住民税の申告書を提出する必要はありません。
所得税の確定申告をしない場合に住民税の申告が必要か分からないときは、住んでいる市区町村へ確認しましょう。
副業と住民税についてはこちらの記事でも解説しています。
Q. 雑所得の副業で50万円赤字なら給与から引ける?
給与所得から差し引くことはできません。
雑所得の金額の計算上生じた損失は、給与所得など他の所得との損益通算の対象にはなりません。
たとえば、
給与所得:500万円
副業の雑所得の計算:▲50万円
だったとしても、
500万円 - 50万円 = 450万円
という損益通算はできません。
雑所得の赤字に注意
副業で赤字が出たからといって、会社員の給与所得から自由に差し引けるわけではありません。
事業所得なのか、雑所得なのかを先に確認しましょう。
Q. 白色申告でも赤字を3年間繰り越せる?
青色申告者に認められている通常の純損失の3年間の繰越控除を、白色申告者が同じように利用できるわけではありません。
純損失の繰越控除は、青色申告の大きな特徴の一つです。
一方、白色申告者についても、一定の変動所得の損失や被災事業用資産の損失など、繰越控除の対象となる例外があります。
そのため、
「白色申告では、どんな赤字も絶対に繰り越せない」
とまで単純化しないようにしましょう。
通常の事業上の純損失を翌年以後へ繰り越す制度を考える場合は、青色申告の要件を確認することが重要です。
Q. 開業した最初の年から赤字を繰り越せる?
開業初年度であっても、青色申告の承認を受け、純損失の繰越控除に必要な要件を満たしていれば、対象となる可能性があります。
ただし、青色申告を利用するには「所得税の青色申告承認申請書」の提出期限があります。
開業しただけで自動的に青色申告になるわけではありません。
開業届と青色申告についてはこちらの記事も確認してください。
Q. 副業で赤字なら税金が戻ってくる?
赤字になっただけで、自動的に税金が戻ってくるわけではありません。
副業が事業所得に該当し、一定の赤字を給与所得などと損益通算した結果、最終的に計算される所得税額がすでに源泉徴収されている税額より少なくなれば、還付が発生する場合があります。
また、青色申告者には、一定の要件のもとで純損失を前年へ繰り戻し、前年分の所得税の還付を受ける制度もあります。
ただし、
赤字額=還付額
ではありません。
実際の税額は、所得金額・所得控除・税額控除・源泉徴収税額などによって変わります。
Q. 副業の赤字が続いたら事業所得ではなくなる?
赤字が続いているという事実だけで、所得区分が自動的に決まるわけではありません。
事業所得か業務に係る雑所得かは、その活動の実態などを踏まえて判断する必要があります。
一方で、副業の赤字を給与所得と損益通算することを目的として、実態を確認せず事業所得として扱うのも適切ではありません。
所得区分に迷う場合は、国税庁の最新情報を確認し、必要に応じて税務署や税理士などへ相談してください。
事業所得と雑所得の違いはこちらの記事で詳しく解説しています。
Q. 副業が赤字でも帳簿や領収書は必要?
赤字だから帳簿や領収書が不要になるわけではありません。
赤字を正しく計算するためにも、売上と必要経費を記録し、取引を確認できる資料を保存しておくことが重要です。
特に青色申告で純損失の繰越控除などを利用する場合、過去の損失が翌年以後の所得計算にも関係します。
帳簿・領収書についてはこちらの記事も確認してください。
まとめ|副業が赤字になったら「所得区分」から確認しよう
副業を始めたばかりの時期は、売上より経費のほうが多くなり、赤字になることがあります。
しかし、
「副業が赤字になった=会社員の給与から赤字を引ける」
というわけではありません。
今回のポイントを整理すると、
- 副業の赤字は、基本的に収入より必要経費が多い状態
- 使ったお金がすべて必要経費になるわけではない
- 損益通算できる赤字の所得区分は決まっている
- 事業所得の赤字は一定のルールで損益通算の対象になる
- 雑所得の赤字は給与所得など他の所得と損益通算できない
- 赤字額と税金の還付額は同じではない
- 青色申告では一定の純損失を翌年以後3年間繰り越せる
- 一定の要件を満たせば純損失を前年へ繰り戻せる場合もある
- 赤字でも帳簿や領収書の管理は必要
- 税金を減らす目的で不適切に経費を増やしてはいけない
特に会社員の副業では、最初に確認したいのが事業所得と雑所得の違いです。
副業が赤字になったときの確認手順
① 売上と必要経費を正しく計算する
↓
② 事業所得・雑所得などの所得区分を確認する
↓
③ 損益通算できる赤字か確認する
↓
④ 純損失が残る場合は繰越し・繰戻しを確認する
↓
⑤ 必要な確定申告を行い、帳簿・書類を保存する
「赤字なら得」「赤字なら申告不要」と考えるのではなく、実際の副業の収支を正しく記録し、その結果に応じて必要な税務処理を行うことが大切です。
関連記事
副業の所得区分・経費・確定申告については、こちらの記事もあわせて確認してください。
副業は事業所得と雑所得どっち?違い・判断基準を会社員向けに解説
副業は青色申告と白色申告どっち?違い・メリットを初心者向けに解説
副業の赤字・経費を正確に管理したい方へ
副業の売上や経費が増えてくると、
- 今年はいくら利益が出ているのか
- 本当に赤字なのか
- どの支出を経費にしたのか
- 前年から繰り越した損失はいくらあるのか
などを自分だけで管理するのが大変になることがあります。
確定申告の直前になって収支を計算するのではなく、日頃から帳簿を整理しておくことが大切です。
freee会計
副業の売上・経費を記録しながら、日頃から収支を整理しておきたい方は、会計ソフトを活用する方法もあります。
マネーフォワード クラウド確定申告
副業の収入・経費・帳簿をまとめて管理し、確定申告の作業を効率化したい方はこちらも選択肢になります。
💰 マネーフォワード クラウド確定申告で確定申告を効率化する
![]()
副業をこれから始める方へ
\ 副業初心者向け・無料ガイド /
エン太の副業のすゝめ
副業初心者ガイド【2026年版】
副業を始めると、収入を増やすことだけでなく、「どの副業を選ぶか」「怪しい案件をどう避けるか」「どう続けるか」も大切になります。
そこで、副業初心者が最初に知っておきたいポイントを1冊の無料ガイドにまとめました。
📘 このガイドで分かること
✓ 副業を始める前に確認したいこと
✓ 怪しい副業を見分けるポイント
✓ 自分に合った副業を選ぶ考え方
✓ 副業を長く続けるための基本
「副業を始めたいけど、何からやればいい?」
という方は、最初の一歩として活用してください。
LINE登録後、「無料ガイド」と送信してください
参考文献・出典
この記事は、2026年8月27日時点で確認できる国税庁の公開情報をもとに作成しています。
- 国税庁「No.2250 損益通算」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2250.htm - 国税庁「No.1500 雑所得」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1500.htm - 国税庁「青色申告制度について」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/0021012-127_02.pdf - 国税庁「No.2070 青色申告制度」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm - 国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
税制や申告制度は変更される可能性があります。実際に確定申告を行う際は、国税庁・自治体などの最新情報を確認してください。










